東野圭吾の考読学

東野圭吾ファンの筒美が、東野作品の感想やそれについて考えたことなどを綴ります。現在は、それ以外の作家さんのことや作家さんが書いた本などについても書いています。

『 おれは非情勤』

 『 おれは非情勤』 (集英社文庫)は小学生向けに書かれた推理小説の短編集。
 非常勤講師をしている若者が主人公なのだが、『おれは非常勤』ではなく『おれは非情勤』という題名になっている。「非情」というのは別に「自分のために必要ならば冷酷に他人を殺す」「自分のためなら仲間を見捨てる」といった冷酷とか非人情ということではなく、「教師なのに教育に対する熱い思いがない」というほどの意味のようだ。
 非常勤講師が行く先々の学校で殺人事件に出会うという変な設定が魅力で、漢字や算数にからめた種明かしが出てくるところなどが面白い。主に『5年の学習』『6年の学習』という学研から出ていた小学生向きの雑誌に連載された作品が入っていて、建前的には小学生向きだが、もしかしたら年をくったおっさんの方が読んだ方が面白いかもしれない。
 物語の最初の方で文字によるメッセージとか留守番電話の残された言葉などに謎が提示され、その謎を解き明かして真実が明らかになる。という感じで話が進む。
 そして、学習雑誌に連載されていたのと関係がありそうなのだが、最後に主人公が教訓めいた発言をすることが多い。例えば「~何事も逃げちゃだめだ。逃げて解決することなんか、この世の中に一つもない」等々。
 書かれた時期は『秘密』が大ヒットする少し前で、この時期の作者の作品に特徴的な人間ドラマよりもトリックなどを重視する本格推理小説である。
 と言っても、雑誌連載時は小学生向きに書かれたものなので、そんなに難しい謎とかトリックが書かれているわけではない。
 東野圭吾が売れてきてからよく書いているような重厚な人間ドラマとは全然違う作風で、どちらかと言えば赤川次郎の小説と感じが似ていて、気楽に楽しく読める面白さがある。ライトミステリーという分野に入るのだろうか。