東野圭吾の考読学

東野圭吾ファンの筒美が、東野作品の感想やそれについて考えたことなどを綴ります。現在は、それ以外の作家さんのことや作家さんが書いた本などについても書いています。

東野圭吾の分類学 その2 小説等の舞台となっている地域で分類する方法

 一人の小説家の作品を、主に小説の舞台となっている地域で分類する方法がある。

 例えば、渡辺淳一だったら、「北海道もの」「東京もの」「京都もの」「伝記もの」という分け方が有力ではないだろうか。
「北海道もの」というのは渡辺淳一が生まれ育ち、学生時代や医師時代を過ごした北海道を舞台とした小説で、恋愛小説だけでなく医学小説もある。「東京もの」というのは作家時代を過ごした東京を舞台とした小説で、不倫等を扱った恋愛小説が圧倒的に多い。「京都もの」は、渡辺淳一が中年以降遊び兼取材に行っていた京都を舞台にした小説で日本的な情緒がある小説である。「伝記もの」だけは、小説の舞台ではなく「人物の伝記である」という内容を重視した分類方法なので分け方が違うとも言えるが、歴史小説なので、厳密に言えば現代の地名によって分類するのには無理がありそうな作品である。

 こうした分け方を東野圭吾に当てはめてみると、「関西もの」「関東もの」「お屋敷もの」という大ざっぱな分け方ができそうに思う。

 「関西もの」というのは、だいたい登場人物が大阪弁を使っていて、金や色に目がくらんだ人間が出てくる作品とか、ユーモラスな人間が出てくるお笑い系の作品が多い。
 『白夜行』『俺たちみんなアホでした』などである。
 「関東もの」が一番多く、その作品はバライティーに富んでいるし。その舞台となる地域もいろいろある。
 中目黒・代官山などの東京の南の方とか、人形町のような下町、山下公園がある横浜、新潟県や長野県と思われるスキー場がある地域、首相官邸がある千代田区、高級ホテルのある港区か品川区だと思われる地域など、一口に関東と言っても様々な場所が舞台となっている。長野県や新潟県は厳密に言えば関東地方ではないが、東京に住んでいる人がスキーやスノーボードをしにいく場所なので、「関東もの」の中に入れた。 
 路線的には社会派小説が多いが、ユーモアとかギャグ的要素があるものもある。
 『秘密』『新参者』など中期以降のよく売れた作品が多い。
 「お屋敷もの」は、本格推理小説の舞台である。地域がよくわからない広い屋敷とか旅館とか別荘が舞台の小説で、周囲とは切り離された閉ざされた空間で殺人事件などが起きることが特徴である。比較的初期の作品が多く、出版された当初のノベルスとかハードカバ―ではあまり売れなかった作品が多い。例えば『仮面山荘殺人事件』『ある閉ざされた雪の山荘で』等である。学校というのもある程度閉ざされた空間なので、もしかしたら青春ミステリーと呼ばれる学校が舞台となっている作品もこの仲間に入れていいかもしれない。

 こうして見てみると、東野圭吾の作品群は、まず舞台となっている地名が「だいたいでもいいからわかる」「全然わからない」で分けることができ、地域がだいたいでもいいからわかるものの中で、「関西的な要素がかなりある」「あまりない」でまた分けることもできる。そして、関東方面だと思われる作品が非常に多く、その中でまた分けることもできる。
 山崎豊子みたいに「関西もの」の方が(一部の?)評論家などには評判がいいということはないが、「お屋敷もの」は他の分野のものよりファンが少ない傾向があり、それは東野圭吾作品の場合、本格推理よりも社会派の方が売れていることと関係が深いと思われる。